「今日も、居ないんだ・・・」

ポツリと呟いた言葉が真っ暗な部屋の中に溶けて消えた。
人の匂いすら薄れたリボーンの部屋は、
1週間前のまま時を止めていた。

姿を消したのはこれが初めてじゃない。
リボーンほどの殺し屋ともなると、
ありとあらゆるところから声がかかり、
その腕前を金でレンタルされる。
こういう世界だからこそ表だった仕事はしないため、
その行方は全くわからなくなる。
わからなくなるというよりも、情報が漏れるのを防ぐために
ありとあらゆる繋がりを遮断される。
もちろん連絡手段なんか無い。
もしどこかで死んでいても、それを知る術も無い。

リボーンは今どうしてるのかなんて、誰も知らない。


「おー、ランボじゃん」

「山本・・・」

リボーンの部屋の前でたたずむ俺を見て、
山本はハハ、と笑った。

「リボーンならまだ戻って来てないぜ?って部屋見りゃわかるよな」

「そうみたいだね」

もう一度目線を部屋に向けてから山本に戻すと
山本はニヤニヤと口の両端を持ち上げながら

「寂しいんだ?」

と俺をのぞき込んだ。

「は、はぁ?寂しいわけないじゃん」

「ふ〜ん」

虚勢を張っていることなんてまるでお見通しで
山本はさらに笑った。

寂しくなんかない。
俺はただ、リボーンを殺すために毎日来てるだけで、
会いたいだなんてこれっっっぽっちも思ってない。
・・・・・・・と思う。

「風の噂だけど、東の方で名を上げていたマフィアが潰されたらしいぜ」

「え!?」

見上げた俺の頭に大きな手の平が乗せられ
髪をくしゃりと撫でた。

「よかったな。そろそろ帰ってくるんじゃね?」

そう言われて自分の表情が明るくなっていることに気付く。
緩む口元を無理矢理引き締めると、
山本はニッと微笑んだ。
なんだか、俺マヌケだ。


だが次の日もその次の日もリボーンは帰って来なかった。

噂はガセだったのか、それとも潰したのはリボーンとは全く無関係のマフィアだったのか。
そんなこともうどうでもよかったけど、
もしやどこかで殺された?重傷とか?なんて心配している自分がいて自嘲する。
会いたいわけじゃない。
リボーンを殺すのは俺だから、他の奴に殺されたりしていたら
次はそいつを追いかけることになるから面倒だ。
だから別に恋しいとか寂しいなんて思ってない。
別に、触れたいとかキスしてほしいとか抱きしめてほしいなんて思ってない。

「別に、会いたいわけじゃない・・・」

もう何度見たかわからない空っぽの部屋をしばらく見つめて
ゆっくりと扉を閉めた。
気付けばまた1週間経っていた。
1日に何度もリボーンの部屋を覗いては不在を確認して帰る。
そんな日が続いて、さすがにみじめさを感じずにはいられなかった。

何してんだ俺。
ストーカーの域だよこれ・・・。

リボーンが不在でもボンゴレは安定していた。
時折ツナさんが忙しそうに出かけたりするのを見かけることがあったが、
特に大きな問題は無いようで
一度ツナさんに「心配とかしないんですか?」と尋ねたときにも、
「心配?大丈夫だよアイツは」とあどけない笑みを見せられた。
これが信頼ってやつなのか。

ホントに俺、何してんだろ。

「もうこれで最後にしとこう・・・」

リボーンが居なくなってから15日目の夜、
俺は今日何度目かのボンゴレアジトへ向かった。

今日居なかったら、もう来るのやめよう。
バカらしい。
女々しい愛人じゃあるまいし、
ていうか別に恋人とかそういう関係じゃないし、
そもそも俺はリボーンを殺そうと思ってるわけだし。

「会いたいわけじゃ・・・、」 

半ば諦めかけてアジトのドアを開くと、
なんだか空気が変わった気がした。
どう変わったのかと聞かれれば上手く答えられないが、
なんか、こう、懐かしい・・・?


予感は的中した。


「ランボ、リボーン戻ってきたよ!」





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秋頃に書いていた小説をやっとアップすることができました・・・。
といってもまだ続きは書いていないのですが。
タイトルの「If I could have my druthers・・・」は「欲を言えば」という意味です、多分。
文句はYA●OO!へ。(笑)
ランボたんは女々しいのがいい。
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