リボーンは気が向いた時くらいしか俺を相手にしない。
なんで俺がアンタの気まぐれに付き合わなきゃいけないんだ。
アンタは俺の気持ちなんて全然お構いなしで、
まるで当然のように俺を抱く。
何ですかそれ。


「んー・・・・・・」

冷たい朝の空気を感じて、身震いし、
俺は近くにあるはずの温もりに手を伸ばした。

昨夜は久しぶりにリボーンの気が向いたようで、
部屋に連れ込まれたかと思うと体を重ねられた。
俺はこの日一仕事終えたばかりで疲れていたというのに、
抗議する俺のことなんか知らないと言わんばかりに
強引な行為だった。

まー、あんだけアンアン言ってりゃ抗議もくそもないか・・・。

苦笑しながら、温もりを求めてベッドのシーツに手を這わせる。
だが指先に感じるのは冷たい感触ばかり。

・・・あれ?

ぼんやり瞼を開くと
そこには空の枕だけが寝そべっていて、
肝心の持ち主の姿はなかった。

「え・・・、リ、リボーン・・・?」

まさか、

おいおい、

嘘だろ。

起きあがって布団をめくってみても
そこにはすでに温もりさえ失った真っ白なシーツがあり、
昨夜の行為を思わせるしわだけが、うっすらと浮かんでいた。
もちろん部屋を見回しても誰もいない。

「・・・・・・・・・」

普通こういう時って一緒に居るもんじゃないんですか。
ほらあの、甘い一時が欲しいわけで。
勝手にもほどがあるだろ、
せめて一言くらい・・・・・
なんだよ。

怒りが込み上げて、
同時に寂しさが押し寄せる。
冷える体をもう一度ベッドに潜り込ませて、
布団を体に巻き付けた。

「・・・リボーンのバカ・・・」

布団からリボーンの匂いがして、
涙が込み上げる。


ああ、なんで俺はこんなサイテーな奴が好きなんだろう。


たしか行為が終わったあと、
リボーンは俺の上に覆い被さってて、
すごく息が乱れてて、
汗ばんだ肌が密着して、
俺も呼吸を整えるのに必死で、
あ、腹の上に精子かけられた。
それから「ランボ・・・」って俺の名前を呼んで、
キスして、
それから・・・

思い出すほど空しくなって唇を噛みしめる。
あの行為は意味を持っていないのかと思うと、
悔しくて涙が出た。

「バカだな、俺・・・」

リボーンにとって俺なんか
性欲のはけ口くらいにしか使えない下っ端くらいにしか
思われてないんだと思うと涙が止まらなかった。
涙の染みていく布団が冷たくて、
また泣けた。

それでもどこか期待している気持ちもあった。
急な仕事が入って渋々出かけた、とか
もしかしたら俺を起こそうとしたかも知れないけど
俺が気持ちよさそうに寝てたから起こせなかった、とか。
都合のいいことばかり浮かんでくるが、
たいていこういうことは実現したりしない。
いつも予想してない事実が返ってきて、
恋愛の難しさを知る。
それでも期待せずにはいられなかった。

俺達は微妙な関係だから。


いつのまに眠ってしまったのか、
目を覚ましたときには日が暮れそうになっていて
そういえば仕事で疲れてたんだった、と目を擦る。
相変わらず部屋の主は不在で、
窓から差し込むオレンジの光がやけに寂しかった。

俺はのろのろと服を身に纏った。
シャツのボタンを一つ一つ留めるたびに隠されていく肌には、
もう熱など残っていない。
あの行為が夢だったのではないかと思えるほど、
頭もどこか冷めていた。

ジャケットは羽織らずに腕に掛け、
ドアノブに手を掛けようとした瞬間、
それは向こう側から回され、おもむろにドアが開けられた。

「まだ居たのか」

開かれたドアからリボーンが顔を出し、
冷めていたはずの俺の頭が再び熱くなり始める。

「今帰るとこだよ・・・」

まるで俺がリボーンの帰りを待っていたみたいで
腹が立って顔を背ける。
アンタから強引に連れてきておいて、
まだ居たのか、はないだろ。

さっさと出ていきたくて、
リボーンの脇を抜けようとすると
腕を掴まれて、掛けていたジャケットが足元に落ちた。

「悪かったな、出かけて」

「・・・・・・・・っ」

卑怯だ。
アンタが謝るなんて。

「な、んで、出かけたんだよ・・・」

俺は俯いたまま呟いた。
リボーンの顔を見たらきっと泣いてしまう。
そしてきっと許してしまう。

「急な呼び出しだ、わかるだろ」

わかるよ、そりゃ。
同じマフィアだもん。
わかるけど、
わかりたくない。

「一言くらい、声かけてくれればよかったのに・・・」

「急だったんだ」

わかるよ。
1分1秒惜しいんだろ。
しょうがないよ。

「仕事、大事だもんね」

わかってる。

「いつ何が起こるかわかんないもんね」

そういう世界だから。

「アンタは有能だし」

わかってるんだよ。


「・・・おい、どうした」

リボーンの掴む腕に力がこめられ、
熱が伝わる。

やめろよ。
触るなよ。
俺のこと好きでもないくせに、
機嫌伺ってんなよ。


「アンタ忙しいんだろ?俺なんかに構わないでよ」


俺のこと、好きでもないくせに
期待させるようなことしないでよ。

「じゃあね」

リボーンの顔を一度も見ないまま、
俺は掴まれた腕に力を込めた。
だが振り払おうとしても、
腕は離れてくれなくて
リボーンの胸の中へ引き寄せられる。
俺はそこの居心地の良さを知ってる。
だから必死に抵抗した。

だって、そこにいると俺は駄目になる。

  「っ!!放せっ、放せよ!!」

俺のこと好きでもないくせに
俺のこと好きでもないくせに
俺のこと好きでもないくせに

暴れる俺を制しながら
リボーンは俺を抱きしめようとする。
愛おしい匂いがして
涙が溢れた。

さっきまでの寂しかった想いが満たされてしまう。
ベッドの上で迎えた切なさを忘れてしまう。

「やだ・・・っ、いやだ・・・」

居心地の良い腕の中から抜け出したくて、
俺はまるで子供のようにその場にしゃがみ込んだ。

「ランボ・・・」

頭上から降り注ぐリボーンの困ったような声が
どこか遠くに聞こえて、
俺はただその場でずっと泣きじゃくっていた。




俺のこと好きじゃないなら、優しくなんてしないで。

なんで俺のこと好きじゃないの?

ねぇ、俺のこと好きになってよ。


本当の気持ちじゃないなら、

こんなこともう、しないで。


俺は馬鹿でガキで単純だから
どうしようもなく胸が痛むんです。






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なんというか、ランボたんの1人で悩んでる様子。
ランボたんは1人で色々勘違いをしてる気がするんですよね。
ほら、リボーンは言葉の少なそうな人だからさ。ね。
ああもう萌えるなぁ!
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