女に不自由したことはない。

黙っていても寄ってくるし、
ちょっと優しくしてやれば愛してるだのなんだのってせがまれる。
多少うざったく感じても、女を大事にして損はない。
よくしゃべる女達は情報通だし、
他のマフィアと繋がってる連中も多い。
だが、そこに愛はあるのか、と問われれば「YES」とは答えられない。
もう何年も女を利用し続けている所為で感情が麻痺してしまっているのか、
それともただ人を愛することが出来ないのか。
最近よくわからなくなっていた。

が、

正直、ランボにはかなり参っている。

これに「愛」という感情が含まれているのかはわからないが、
ただなんとなく放っておけなくなっている。
困った表情や、涙をこらえて震える肩、朱に染まる頬。
つい泣かせたくなるのは、
泣いてるときだけに見せる素の姿に惹かれている所為だろうか。

「・・・我ながらサドだな」

リボーンはお気に入りのワインとチーズの入った紙袋を片手に抱えながら
アジトの玄関を開けた。
奥の部屋から聞こえる話し声にツナの存在を確認し、
そのまま2階へ上ると、部屋の前に山本の姿があった。
「何やってんだ」と尋ねる前に、山本が俺に気付いて声をかけた。

「あれ?出かけてたんだ?ランボが中に居ますよ」

「・・・あぁ」

そういえばそんなことを言ったな、と思い出し
「わかった」と一言告げてドアを開けた。

山本がドアを見張っていたようだが、どうせもう窓から逃げ出しただろう。
待っていたところで、あいつには何のメリットもない。
キスのことだって、嫌がらせくらいにしか感じていないだろう。
馬鹿だから・・・

「・・・・・・・・・って、居るのかよ」

そこには、ベッドの上で横になっているランボの姿があった。
待ってる間に眠ってしまったのか、
上半身を投げ出して静かに寝息を立てていた。
その寝顔は、10年前よりは大人びたと言っても
まだ幼さを残している。

あのキスに意味を持たせたところで、こいつはどうするだろう。
戸惑い、嫌悪し、拒絶するだろうか。

音をたてないように窓際のテーブルに酒を置くと、
上着を脱いでネクタイを外して椅子にかけ、
再びランボに向き直った。

どうすっかな・・・。

寝顔をまじまじと見つめていると、
こういう時の好奇心というのはどこから湧いてくるのだろうか、
悪戯心が頭をもたげ始める。
並ぶようにベッドに座り、
ランボの髪をそっと梳いてみる。
柔らかく癖のある細い髪は 指の間をすり抜けてさらりと落ち、その様は見ていて飽きなかった。

「ん・・・」

小さな吐息を漏らしてランボが背を向けるように寝返りを打った。
その姿はまるで子供のようで、俺はなお髪を指で弄んだ。
ここで起きたらどんな反応をするのかは非常に見物だが、
こちらの体裁も危うい。
「なんでそんなことすんの?」と聞かれたら、
俺は何と答えるべきなのか。
曖昧にはぐらかせば、こいつはまた怒るんだろうか。
それとも、泣くのだろうか。

そこまで考えて、俺は小さく鼻で笑った。

超一流の殺し屋と謳われた俺が
たかだか三流マフィアのこいつにどう思われるのかが、怖いだなんて。

命を狙われて10年。
うざったくて仕方がなかったはずなのに、
いつの間に歯車が狂ってしまったのか。

もっと触れていたいという衝動は止まらず手を髪から頬へと滑らせると、
ランボの体がビクリと跳ねた。

こいつ、起き・・・

その時、部屋の窓ガラスがけたたましい音をたてて割れ、
一瞬にして飛び散り、部屋に散乱した。
そして全壊になった窓から風が飛び込んできた。






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リボーン視点です。
リボーンはハードボイルドな漢であってほしいけど、
なんつーのかな、こう、子供をからかうどこか子供じみた大人みたいな・・・ってわけわからんね。
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